Skip to content

Tag: Node network

Tags

船舶設計の新時代:NAPAのノードネットワークがもたらす革新

  NAPAは次世代の船舶設計プラットフォーム – NAPA Engineerの開発を進めています。これは、これからの船造りをもっとスムーズに、そして柔軟にするための新たな取り組みです。 この新しいプラットフォームの中心には「NAPAノードネットワーク」と呼ばれる革新的な仕組みがあります。これによって、設計の自由度がぐっと広がり、より効率的で直感的な船の設計が可能になります。 なぜ設計手法を変えるのか?  船の設計はますます複雑になってきています。これは、新しい計算方法、適用可能な新しい技術革新(例えば温室効果ガス排出削減のために必要なもの)、そして安全面や環境面での規制要件の強化などが背景にあります。こうした要素に対応するため、設計者にはこれまで以上に多くのことが求められています。 このように変化し続ける状況の中で、特定の設計要素における船舶設計の性能を向上させることは非常に難しくなっています。なぜなら、設計に関する判断が他の分野にどのような影響を与えるかを予め正確に予測することがほぼ不可能だからです。 その結果として、設計上のトレードオフは、時間的な制約から代替案を十分に検討することなく決定が下されることがよくあります。全体を見渡す設計手法やアルゴリズムによる最適化は学術の世界ではよく知られていますが、実際の産業現場ではあまり活用されていません。 一方で、ソフトウェアの使いやすさを重視する考え方(ユーザーエクスペリエンス(UX))はこの10年で大きく進化しました。たとえば、操作が直感的でわかりやすい設計画面や、複雑な作業を簡単にできる仕組みなどがその一例です。こうした新しいUXの考え方や技術とともに、関数型プログラミングやローコードといったアプローチもエンジニアリングソフトウェアの分野で注目を集めています。UXの向上とローコードの導入は、設計の明確さを高め、メンテナンスの手間を減らし、信頼性の高い船の設計解析を実現する上で重要な役割を果たします。 ノードネットワークの登場   NAPAのノードネットワークは、設計の複雑さや多様化するニーズに応えるための新しいアプローチです。NAPA Engineerでは、船の3Dモデルを中心に、設計に関わる様々な要素をノードネットワークとして整理しています。これは、特定の計算や作業を行う「ノード」と呼ばれる小さな機能のかたまりを使って、設計プロセスを組み立てていく仕組みです。これらのノードは、つなげたりグループ化したりすることで、複雑で多分野にまたがる計算も扱えるようになります。それでいて、設計者が全体を見渡しやすい構造になっているのが特徴です。 ノード、ノードグループ、ノードネットワークのライブラリを活用することで、設計者はプロジェクトや企業のニーズに合わせて柔軟に設計の流れをカスタマイズすることができます。 ノードネットワークには次の特長があります: 複雑なシステムを視覚的かつモジュール的に構築できる ノードライブラリを使って、再利用やカスタマイズがしやすい 分野間のデータの流れや依存関係が明確に見える 全体を見渡した設計やアルゴリズムによる最適化にも対応 設計の考え方をノードネットワークとして整理することで、設計者は設計プロセス全体を把握しやすくなり、必要に応じて部分的にまとめたり、自動化したりすることも可能になります。最終的には、NAPA classicと同様に、必要なすべての船舶設計計算をカバーしながら、柔軟なカスタマイズもサポートします。 全てのエンジニアに力を与える仕組み  経験豊富な設計者が高度なカスタムノードを作成できる一方で、初心者にも扱いやすいように工夫されています。直感的に使えるグループノード、柔軟なユーザーインターフェース、そしてあらかじめ構築された機能ブロックのサポートにより、誰でもスムーズに使い始めることができます。このように、高い機能性と使いやすさのバランスを大切にしていることで、ノードネットワークはユーザーの成長に合わせて進化できる、スケーラブルなプラットフォームとなっています。初期のコンセプト設計から、規制対応、性能最適化に至るまで幅広い段階で活用できます。 また、企業固有の手法や基準を取り入れることもできるため、社内での設計の標準化にもつながります。その結果、ミスの削減やチームや分野を超えた協力の促進にも貢献します。 事例紹介:サービス運用船(SOV)の設計  このアプローチの有効性を確認するために、NAPAチームはノードネットワークを用いた実際のケーススタディを実施しました。具体的には以下のような内容です: サービス運用船(SOV)のパラメトリックな3D製品モデルの作成 非損傷時及び損傷時の復原性計算の自動化 船体形状の変形と、それに伴う形状および復原性の更新 これらを一つのワークフローとしてつなげることで、設計チームは設計変更を迅速にテストし、計算を再実行し、性能を比較することができました。すべてが一つの統合された環境の中で完結します。 このテストケースから明らかになった大きな利点は、一度ノードネットワークを構築してしまえば、設計の可能性を探る作業が、幾つかのパラメータの更新だけで簡単に行えるという点です。さらに、各ノードは独立して動作し、他に影響を与えない仕組みになっているため、結果は常に一貫性があり信頼できます。これは、最適化アルゴリズムやAIを活用したワークフローと組み合わせる際にも非常に有効です。 今後の展望  NAPAのノードネットワークアプローチは、長年にわたって実績のある船舶設計の手法と、現代的なソフトウェアの考え方を組み合わせたものです。その結果、船舶設計者がよりスマートに、より速く、そして自信を持って設計に取り組めるツールが生まれました。 船の設計ソフトウェアが進化を続ける中で、ノードネットワークという手法は、次世代の持続可能で高性能な船づくりの基盤として、大きな可能性を秘めています。 このノードネットワークの考え方とその可能性は、ICCAS(International Conference on Computer Applications in Shipbuilding)で初めて紹介されました。     現在、NAPA Engineerがアルファ版で利用可能です NAPA Engineer の最新バージョンを、いち早く体験してみませんか? 現在、アルファ版が公開されており、初期ユーザーのコミュニティが少しずつ広がっています。私たちと一緒に、これからの船舶設計のあり方を形づくっていきましょう。 コミュニティに参加すると、新機能をいち早く試せるだけでなく、フィードバックを通じて開発に関わることができます。世界中の設計者やエンジニアの声を取り入れながら、NAPA Engineer はより実用的で使いやすいツールへと進化していきます。

Read Article