Tag: Naval Architecture
ブリッジに乗り込んで ― 船舶設計学生からNAPAインターンへ
NAPA Finland本社にて受け入れた学生Trainee(Oskar Mewes)の記事をご紹介します。 OskarはドイツのNarval Architectureの学生で、大学でNAPAソフトを使った経験から、2024年にNAPA FinlandでTraineeとして経験を積みました。カスタマーサービスチームの一員として、実際の課題に取り組みながらソフトの理解を深め、信頼と協力を重んじる職場文化の中で成長しました。この経験は彼の専門知識を広げ、将来のキャリアに大きな影響を与えた、とOskarは述べています。 詳細はこちらをご覧ください。
Read Article6月 4, 2025
船舶設計の新時代:NAPAのノードネットワークがもたらす革新
NAPAは次世代の船舶設計プラットフォーム – NAPA Engineerの開発を進めています。これは、これからの船造りをもっとスムーズに、そして柔軟にするための新たな取り組みです。 この新しいプラットフォームの中心には「NAPAノードネットワーク」と呼ばれる革新的な仕組みがあります。これによって、設計の自由度がぐっと広がり、より効率的で直感的な船の設計が可能になります。 なぜ設計手法を変えるのか? 船の設計はますます複雑になってきています。これは、新しい計算方法、適用可能な新しい技術革新(例えば温室効果ガス排出削減のために必要なもの)、そして安全面や環境面での規制要件の強化などが背景にあります。こうした要素に対応するため、設計者にはこれまで以上に多くのことが求められています。 このように変化し続ける状況の中で、特定の設計要素における船舶設計の性能を向上させることは非常に難しくなっています。なぜなら、設計に関する判断が他の分野にどのような影響を与えるかを予め正確に予測することがほぼ不可能だからです。 その結果として、設計上のトレードオフは、時間的な制約から代替案を十分に検討することなく決定が下されることがよくあります。全体を見渡す設計手法やアルゴリズムによる最適化は学術の世界ではよく知られていますが、実際の産業現場ではあまり活用されていません。 一方で、ソフトウェアの使いやすさを重視する考え方(ユーザーエクスペリエンス(UX))はこの10年で大きく進化しました。たとえば、操作が直感的でわかりやすい設計画面や、複雑な作業を簡単にできる仕組みなどがその一例です。こうした新しいUXの考え方や技術とともに、関数型プログラミングやローコードといったアプローチもエンジニアリングソフトウェアの分野で注目を集めています。UXの向上とローコードの導入は、設計の明確さを高め、メンテナンスの手間を減らし、信頼性の高い船の設計解析を実現する上で重要な役割を果たします。 ノードネットワークの登場 NAPAのノードネットワークは、設計の複雑さや多様化するニーズに応えるための新しいアプローチです。NAPA Engineerでは、船の3Dモデルを中心に、設計に関わる様々な要素をノードネットワークとして整理しています。これは、特定の計算や作業を行う「ノード」と呼ばれる小さな機能のかたまりを使って、設計プロセスを組み立てていく仕組みです。これらのノードは、つなげたりグループ化したりすることで、複雑で多分野にまたがる計算も扱えるようになります。それでいて、設計者が全体を見渡しやすい構造になっているのが特徴です。 ノード、ノードグループ、ノードネットワークのライブラリを活用することで、設計者はプロジェクトや企業のニーズに合わせて柔軟に設計の流れをカスタマイズすることができます。 ノードネットワークには次の特長があります: 複雑なシステムを視覚的かつモジュール的に構築できる ノードライブラリを使って、再利用やカスタマイズがしやすい 分野間のデータの流れや依存関係が明確に見える 全体を見渡した設計やアルゴリズムによる最適化にも対応 設計の考え方をノードネットワークとして整理することで、設計者は設計プロセス全体を把握しやすくなり、必要に応じて部分的にまとめたり、自動化したりすることも可能になります。最終的には、NAPA classicと同様に、必要なすべての船舶設計計算をカバーしながら、柔軟なカスタマイズもサポートします。 全てのエンジニアに力を与える仕組み 経験豊富な設計者が高度なカスタムノードを作成できる一方で、初心者にも扱いやすいように工夫されています。直感的に使えるグループノード、柔軟なユーザーインターフェース、そしてあらかじめ構築された機能ブロックのサポートにより、誰でもスムーズに使い始めることができます。このように、高い機能性と使いやすさのバランスを大切にしていることで、ノードネットワークはユーザーの成長に合わせて進化できる、スケーラブルなプラットフォームとなっています。初期のコンセプト設計から、規制対応、性能最適化に至るまで幅広い段階で活用できます。 また、企業固有の手法や基準を取り入れることもできるため、社内での設計の標準化にもつながります。その結果、ミスの削減やチームや分野を超えた協力の促進にも貢献します。 事例紹介:サービス運用船(SOV)の設計 このアプローチの有効性を確認するために、NAPAチームはノードネットワークを用いた実際のケーススタディを実施しました。具体的には以下のような内容です: サービス運用船(SOV)のパラメトリックな3D製品モデルの作成 非損傷時及び損傷時の復原性計算の自動化 船体形状の変形と、それに伴う形状および復原性の更新 これらを一つのワークフローとしてつなげることで、設計チームは設計変更を迅速にテストし、計算を再実行し、性能を比較することができました。すべてが一つの統合された環境の中で完結します。 このテストケースから明らかになった大きな利点は、一度ノードネットワークを構築してしまえば、設計の可能性を探る作業が、幾つかのパラメータの更新だけで簡単に行えるという点です。さらに、各ノードは独立して動作し、他に影響を与えない仕組みになっているため、結果は常に一貫性があり信頼できます。これは、最適化アルゴリズムやAIを活用したワークフローと組み合わせる際にも非常に有効です。 今後の展望 NAPAのノードネットワークアプローチは、長年にわたって実績のある船舶設計の手法と、現代的なソフトウェアの考え方を組み合わせたものです。その結果、船舶設計者がよりスマートに、より速く、そして自信を持って設計に取り組めるツールが生まれました。 船の設計ソフトウェアが進化を続ける中で、ノードネットワークという手法は、次世代の持続可能で高性能な船づくりの基盤として、大きな可能性を秘めています。 このノードネットワークの考え方とその可能性は、ICCAS(International Conference on Computer Applications in Shipbuilding)で初めて紹介されました。 現在、NAPA Engineerがアルファ版で利用可能です NAPA Engineer の最新バージョンを、いち早く体験してみませんか? 現在、アルファ版が公開されており、初期ユーザーのコミュニティが少しずつ広がっています。私たちと一緒に、これからの船舶設計のあり方を形づくっていきましょう。 コミュニティに参加すると、新機能をいち早く試せるだけでなく、フィードバックを通じて開発に関わることができます。世界中の設計者やエンジニアの声を取り入れながら、NAPA Engineer はより実用的で使いやすいツールへと進化していきます。
Read Article5月 26, 2025
日本の船舶設計の新時代を切り開く
昨年秋に神戸で開催されたNAPA User Seminar Japanは、54団体から130名以上の参加者を集め、大盛況のうちに幕を閉じました。NAPA User Seminar Japanは年々規模を拡大し、今回は過去最大の参加者数を記録しました。 これは、革新とコラボレーションに対する市場の需要の高まりを証明するものです。 2002年に日本で初めてNAPA User Seminarを開催して以来、私たちは長い道のりを歩んできました。この業界が集まり続ける理由は何でしょうか?このイベントのコーディネーターであり、Design Solutionsのアシスタントである小林葉子が説明しました。 このセミナーは、お客様と直接お会いしてフィードバックをいただける貴重な機会です。NAPA Japanチームにとって、参加者数の増加はビジネスの成長とNAPAコミュニティの拡大を映し出しています。またこのイベントは、毎年セミナーを成功させるという共通の目標に向け、チームビルディングにも役立っています。 業界がかつてない変化に直面している今、NAPA User Meetingが「Accelerating the Future of Ship Design」というテーマに焦点を当てたのに続くこのテーマは、まさに絶好のタイミングでした。セミナーを通じて、船舶設計の未来は、多様な関係者による協働的なものになることが明らかになりました。 この未来を築くために、私たちは競争の垣根を越えて業界全体をまとめ、参加者が他の専門家と出会い、船舶設計の未来について議論するまたとない機会を提供します。これにより、NAPAとお客様は、最前線からの船舶設計と運航に関する現場からの実践的な洞察から恩恵を受け、競争優位性を獲得できます。セミナーを通じて、一般財団法人 日本海事協会、日本郵船株式会社、浅川造船株式会社、日本シップヤード株式会社、株式会社MTI、 常石造船株式会社、 株式会社名村造船所、三井E&S造船株式会社など、日本の海運業界における先駆的なリーダーたちから、NAPAの活用事例についてお話を聞くことができました。 結果はいかに?セミナーの主な成果をご覧ください。 デジタルトランスフォーメーション:デジタルツインと拡張3Dワークフロー 船舶設計におけるデジタルツイン技術は新しいものではありませんが、日本ではより大きなコラボレーションとイノベーションによって進化しています。設計データ、運用上の洞察、3Dモデルを「信頼できる唯一の情報源」に統合することで、デジタルツインはよりシームレスな業務フローを生み出し、船舶のライフサイクル全体を通して不整合を最小限に抑え、人的資源を最適化します。 設計プロセスの合理化だけでなく、安全なデータ共有も可能になるため、関係者は競争力を維持しながら将来の設計の改良が可能です。User Seminarでは、この可能性に焦点が当てられ、専門家たちが、デジタルツインがいかに船主、設計者、オペレーター間のコラボレーションを強化し、最終的に安全性と燃費効率の両方を向上させることができるかについて議論しました。 このパラダイムシフトは、日本海事協会の 「船舶の設計と運航データの共有による新たな価値創造 –デジタルツインの実現にむけて-」と題されたプレゼンテーションに集約されています。3Dモデルやデジタルツインが、船舶設計者と海運会社間の知識ギャップをどのように埋め、船舶の設計や運航の実態をより実践的に理解することに近づけるかについて掘り下げました。 株式会社商船三井のデジタル・環境スペシャリストである芦田哲郎氏は、シミュレーション、技術革新、燃料最適化のためのデジタルツールの重要性を強調し、「船主の観点から、これは非常に重要なテーマです」と述べました。NAPA Studiosと商船三井、日本海事協会、その他の海事リーダーによるデジタルツインプロジェクトは、造船会社と船主の間で安全なデータ共有フレームワークを構築し、デジタルツインの導入を推進することを目的としています。また、芦田氏は以下のように付け加えました。 燃費効率とグリーンテクノロジーの重要性が高まる中、船舶設計データはこれらの目標をサポートする上で重要な役割を果たすと私は信じています。 日本郵船チームは講演の中で、船主としてどのように3D設計技術を活用して新たなコンセプト開発をコンテナ船の設計に導入しているかを強調し、基本設計段階への影響を訴えました。彼らはまず社内でコンセプトを開発し、その後NAPA Steelの3D図面を活用してコンセプトを共有し、船級承認を取得しました。 日本郵船の講演は最も興味深いものでした。彼らは多目的コンテナ船の3DMBAという難題に挑みました。船主が船の設計に力を入れているのは大きな一歩であり、感銘を受けました。-日本海事協会 デジタルトランスフォーメーションセンター 兼 情報技術部 主管 長俊寿氏 行動するNAPAマルチステークホルダープロセス 本セミナーでは、NAPA Steelのようなツールが、初期設計から詳細設計段階までの3Dモデルの使用と業務フローを支援し、初期段階からのサポートにより造船会社の時間、コスト、リソースの節約に役立つことを紹介しました。実際、これらのツールは、セミナーで目にした協業の精神を体現しており、より正確で迅速な開発に貢献しています。これは、スピードと正確さが大きな違いを生む競争環境において極めて重要です。 セミナーでの議論は、特に複雑な設計要件を管理し、規制基準を満たす上で、これらのツールが造船会社にとっていかに貴重なものになっているかを示しました。 特に初期設計段階でNAPA Steelを使用することにより、船舶設計者は船舶のライフサイクルを通じて使用される3Dモデルを作成することができます(他のCADソフトウェアとの互換性もあります)。これにより、すべてのコミュニケーションが合理化され、効率的な設計変更と迅速な反復が容易になります。さらに、頻繁な有限要素モデル解析を含め、同じモデル内で複数の設計バリエーションの検証が可能です。 NAPA Steelは、中小規模の造船会社においても、船舶設計者にとって標準的かつ不可欠なツールになりつつあります。-NAPA Design Solutions Key […]
Read Article3月 5, 2025