October 10, 2025
複雑化する設計・運航業務を支援 ナパがセミナー、「デジタルとつなぐ力で解決」
日本・神戸-2025年10月7日-海事プレス(ニュース ー 造船・舶用)にて、NAPA User Seminar Japan 2025 開催について掲載されました。ぜひご覧ください。

船舶の設計・運航支援システムを手掛けるフィンランドのナパ(NAPA)は6~7日の2日間、神戸市内でユーザー会議を開催している。新技術や新燃料、国際規制の導入により船舶の設計と運航業務の両分野で複雑性が増している中、同社のデジタルツールの活用よる効率化の効果などを紹介。ミッコ・クオサCEOは「複雑性の解決のカギは『つなぐ力』。当社は設計初期から運航に至るライフサイクルをカバーする技術・製品・専門知識を持つ点が強みで、設計と運航をつなぐ『橋』として支援したい」と語った。
ナパは船舶上流設計システムの最大手で、日本国内でも造船所を中心に59機関が「NAPA Steel」など同社の設計支援システムを採用している。さらに近年は同社の運航支援システムも普及しつつある。これを受けて、同社の毎年秋の日本のユーザー会議には、主要造船所の大半や海運会社、船舶管理会社、設計会社などの技術担当者らが多数集まる。
6日のユーザー会議冒頭では、クオサCEOが、船舶の規制強化、新しい船型の登場、燃料転換対応によって造船所などの設計業務が複雑化していると説明。「これに対して当社は統合設計プラットフォームによって対応している。初期段階からの最適化、自動化、設計チーム間の連携強化、3次元モデルによる船級承認などデジタル化を包括的に支援する」と語った。
また船舶運航に関しても船上・陸上ともに業務が複雑化している点を挙げ、「IMO(国際海事機関)の今春の委員会では排出からバラスト水に至るまで、より精緻な報告義務が課せられた。現場では、54%の担当者が『業務量が増加した』と答え、3人に1人が『報告ミスによる刑事責任を恐れている』との調査結果もある」とし、同社のデジタルソリューションが自動記録など効率化を支援すると説明。ガス船大手アンソニー・ベイダーが同社システム導入により管理業務時間を1隻あたり年2000時間削減し、事務負担を14%軽減したとの例を挙げ、「複数燃料・複数技術が混在する時代には当社ツールが不可欠な存在となる」とした。
業界の脱炭素化と最適運航への取り組みについては「現在は船舶のデータが分散し、ツールが統合されておらず、速度調整や船底清掃などの判断にも十分な根拠が欠けているのが実情」とし、同社の運航支援ツール「Fleet Intelligence」「Voyage Optimization」が運航判断に明確なデータ的裏付けと信頼性を与えると紹介。クミアイ・ナビゲーションが「Fleet Intelligence」を活用し、運航性能を向上させながら環境規制への適合を実現している例を示した。
ナパはシステム提供だけでなく、設計と運航の知見を活用して業界の課題解決を図る活動「NAPA STUDIO」を進めている。水谷直樹上級副社長が現状を紹介。同活動では、ソフトやデータのコンサルティングサービスと、業界協業の促進の2本柱で展開しており、コンサルの例としては欧州船社の業務システム開発を行っている例や、船舶のシグナルデータを用いた風力推進装置搭載船の効果解析、ヌーンレポートを基にしたダクトなど省エネ装置の効果分析、風力推進装置搭載前の費用対効果シミュレーションなどを顧客の要望に応じて提供しているとした。また協業促進では、国内14社によるデジタルツインの共同研究や、積付計算・復原性計算機(ローディング・コンピューター)用のAPI開発、大阪大学での船舶設計での人工知能(AI)活用研究講座「阪大OCEANS」との協業などの例を挙げ、「困りごとがあれば相談してほしい」とした。
このほかユーザー会議では、日本海事協会(NK)の有馬俊朗常務理事がDXやAIがもたらすイノベーションについて基調講演したほか、6~7日にかけて臼杵造船や檜垣造船、大島造船所、常石ソリューションズ東京ベイ、日本シップヤード、函館どつく、常石造船、旭洋造船などの造船所らがNAPAの活用事例を紹介している。

*海事プレスから転載の許可を得ています。
海事プレス プレスリリース:https://www.kaijipress.com/news/shipbuilding/2025/10/196300/
PDF:複雑化する設計・運航業務を支援 ナパがセミナー、「デジタルとつなぐ力で解決」
海事プレスURL:https://www.kaijipress.com/