October 29, 2025
NAPA、COMPIT 2025に登壇 – デジタル造船の最前線へ
第23回 海事産業におけるコンピューターおよびIT応用会議(COMPIT 2025)にて、NAPAは再び、デジタル船舶設計の研究、モデルベース承認、そしてオープンスタンダードの推進におけるリーダーシップを示しました。歴史あるチェルトサ・ディ・ポンティニャノ(Certosa di Pontignano)で開催された本イベントには、世界中の専門家が集まり、海事分野のデジタル化における最新のイノベーションが議論されました。イベント終了後には、船級承認プロセスにおけるデータ標準化を推進するため、OCXコンソーシアムの会合も開催されました。
COMPIT は、船舶設計および造船におけるトレンドやイノベーションを議論する場として、長い歴史を持つ会議です。この分野の研究者たちが進行中のプロジェクトやアイデアを発表する一方で、ソフトウェア機能の新たな進展に関するプレゼンテーションや、業界の設計会社や造船会社が日々の業務でこれらのイノベーションをどのように活用しているかを共有するセッションも行われます。主要な業界関係者同士の相乗効果とイベントの雰囲気が、アイデアの共有を促進し、現代の海事分野が直面する課題に対するソリューションの開発を後押ししています。


NAPAの主な貢献
NAPAは、デジタル化における先進的な取り組みを紹介する、インパクトのある4つの講演を行いました。
1. モデルベース造船による初期段階の生産性評価
発表者:益井 崇好(NAPA)、松尾 宏平・谷口 智之・森下 瑞生(NMRI)、青木 一紀(NAPA Japan)
この論文では、初期生産計画におけるシミュレーション駆動型アプローチを紹介しました。NAPAの3D製品モデルとNMRIが開発した生産シミュレーションツールを統合することで、造船会社は設計初期段階から生産性や製造性を評価できます。エンジンルーム二重底ブロックを対象としたケーススタディでは、この手法がデータに基づく意思決定を可能にし、リードタイムの短縮、品質・安全性の向上に寄与することが示されました。
2. 3D構造承認を超えたOCX利用の拡張
発表者:Myeong-Jo Son、Ludmila Seppälä、Francesco Oneto(NAPA)、Bae-Jun Kwon (DNV)
このプレゼンテーションでは、Open Class 3D Exchange(OCX)標準を、現在の構造承認での利用を超えて拡張する方法を探りました。チームは、OCXが船舶ライフサイクル全体にわたる幅広いデジタルコラボレーションを支援できることを示しました。これには、FEM、復原性解析、生産計画などが含まれます。この取り組みは、単一の信頼できる情報源として統一された3Dモデルの重要性を強調しました。
3. 造船・海運における情報基盤:船舶ライフサイクル、デジタルモデル、ツイン、そして断片化されたデータのつながり
発表者:安藤 英幸 (MTI) 、Ludmila Seppälä (NAPA)
この論文では、船舶ライフサイクル全体にわたる分断されたデータの課題に取り組み、統合的な情報基盤を提案しました。デジタルツインと構造化データモデルを活用することで、設計・運航・保守の間に存在するギャップを埋め、より効率的で透明性の高い船舶管理を実現することを目指しています。
4. 現実における3Dモデルベース承認
発表者:Florin-Ciprian Luli(Vard)、Myeong-Jo Son(NAPA)、Ole Christian Astrup(DNV)
このプレゼンテーションでは、3Dモデルベース承認プロセスを実際のVARD設計に適用した事例を紹介しました。NAPAからエクスポートされた3D OCXファイルがDNVに船級承認のため提出され、レビューサイクルの流れや設計者とのコメントやフィードバックのやり取りが説明されました。また、従来の船級図面の準備とOCXモデルを効率性や時間短縮の観点で比較し、設計者と造船会社のコラボレーションへの影響や、3Dモデルベース承認の利点を最大限に活用するために必要なプロセスの適応についても議論しました。
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より広がる関わり
NAPAは自社のプレゼンテーションに加え、他の複数の論文でも言及されており、海事分野のデジタル化におけるその影響力の大きさが改めて示されました。これらには、船舶設計におけるAIを活用したデータ検証、BIMや船舶設計モデルとのデジタルツインの統合、3Dモデルベース承認の実務経験、モデルベース設計プラットフォームに関する共同研究が含まれます。NAPAの顧客やパートナーによる多様な研究は、ソリューションの実用的な応用を見出し、継続的な開発に向けた協働の場としても大きな価値を持っています。
COMPIT 2025で注目を集めたトピック
多くの魅力的なプレゼンテーションの中でも、特に議論の中心となったのは、海事分野におけるAIの活用、3Dモデルベース承認プロセス、そしてデジタルツインの応用でした。LLM(大規模言語モデル)やAIの活用範囲は急速に広がっており、設計者や船員による日常的な利用も始まっています。研究用途から見た将来の展望としても、今後さらに多くのユースケースが生まれ、海事業界はAIの恩恵を大きく受けることが期待されています。デジタルツインはここ数年にわたり注目され続けており、特定の目的に応じた活用に関しては業界内で共通認識が形成されつつあります。また、船舶のライフサイクルを支える多層構造のAI駆動型デジタルツインの実現可能性についても、前向きな見方が示されました。3Dモデルベース承認プロセスも、OCXコンソーシアムの取り組みやデジタル化の進展により、ますます勢いを増しています。

OCXコンソーシアム
NAPAの取り組みは、Dr. Ole Christian Astrup(DNV)が議長を務めたOCX コンソーシアムのセッションでも大きく取り上げられました。このセッションでは、モデルベース承認とデジタルコラボレーションの基盤として、OCX標準の採用が広がっていることが強調されました。NAPAは、OCXおよび相互運用性推進フォーラムの形成と拡張に積極的に関与しており、オープンイノベーションと業界全体の相互運用性への強いコミットメントを示しています。OCXコンソーシアムは、デジタル変革の恩恵を最大限に活用したいという思いから生まれ、船級承認や業界間の連携を支える標準的な3Dモデル交換形式(OCX)の開発を進めています。従来の2D図面を統一された3Dモデルに置き換えるという本来の目的に加え、船級承認プロセスそのものを見直す機会も提供しています。この取り組みには、業界の主要なソフトウェアベンダーや船級協会が参加しており、造船会社からもすでに好意的なフィードバックが寄せられています。船級承認時のやり取りが効率化され、時間と労力の削減につながるだけでなく、より革新的な設計の実現にも貢献しています。
今後に向けて
COMPIT 2025でのNAPAの存在感は、海事分野のデジタル変革をリードする企業としての地位を改めて示すものとなりました。デジタル化の潮流は、業界にとってイノベーションを生み出し、環境対応の推進を支える大きなチャンスとなっており、業務プロセスを改善するためのコンピュータおよびITソリューションの開発がソフトウェア開発の中核を成しています。NAPAは、オープンスタンダード、シミュレーション技術、ライフサイクルデータの統合に継続的に投資することで、造船会社、設計者、運航者が将来に自信を持って進んでいけるよう支援しています。
NAPAの共著による4本の論文は、すべて一般公開されているCOMPIT 2025のプロシーディングスに収録されており、こちらから閲覧可能です。
