September 4, 2025
迫る2025年EUA初回返納期限-EU ETS対応に向けた準備ポイント

欧州排出量取引制度(EU ETS)は、海運業界の前提を急速に変えつつあります。次の大きな節目は2025年9月30日。2024年の排出量に対する40%分の排出枠(EUA)の返納が必要です。しかし、多くの事業者はいまだ報告やコンプライアンス対応に苦労しており、その一方でリスクは急速に高まっています。具体的には、金銭的な制裁、寄港制限、そして競争力の低下が挙げられます。こうした潜在的リスクを踏まえると、データに基づいたEU ETS対応戦略を構築し、単なる規制遵守をビジネスチャンスへと転換することが不可欠です。
夏季の間も、EU ETSへの対応に向けた動きは止まりません。2025年9月30日までに、事業者は2024年の検証済み排出量の40%をEUAとして返納しなければなりません。期限は刻一刻と近づいています!
EU ETSは2024年に導入されましたが、Lloyd’s List の報道によると、2025年3月の当初の期限までに検証済み排出量報告書を提出した企業は、義務のある企業の40%未満にとどまりました。また、回答者の過半数が、排出量報告を「EUA取引や競争優位の機会」ではなく、単なるコンプライアンス上の負担として捉えていることが明らかになっています。
EU ETSで増す負担とEUA戦略の重要性
EU ETSは、特に中小規模のオペレーターにとって、排出枠の購入・管理・返納における新たな複雑さと事務負担をもたらしています。EU ETSコンプライアンスの全体像については弊社の「EU ETS実務ガイド(英語)」で詳しく解説していますが、2025年9月30日の期限は目前に迫っており、運航上の影響や金銭的な制裁が現実的なリスクとなっています。
そのため、堅牢なEUA戦略の構築が重要となっています。この対応のために専任要員を配置する企業もあれば、外部の事業者に委託する企業も見られます。いずれの場合も、EUAを「いつ・どの価格で・どの数量を購入するか」 を正しく判断できれば、大きな商業的優位性につながります。逆に、排出量ニーズの正確な予測がなければ、過剰支払いや価格変動の影響、さらにはコンプライアンス不履行のリスクに直面しかねません。
EUAの計画は、キャッシュフロー管理の観点でも重要です。早すぎる購入は資金の固定化につながる一方、遅すぎる対応は価格高騰のリスクを高めます。データに基づく正確な予測を活用することで、船舶会社はEUA購入を単なるコンプライアンス報告にとどめず、予算編成や財務計画に統合することができます。
コストを抑え、規制にも対応-NAPAのデータ活用ソリューション
よりスマートなEUA管理の鍵は、正確で検証可能なデータ分析にあります。適切なツールを活用することで、次のような取り組みが可能になります:
- 船舶単位およびフリート全体の排出量を算出できるNAPA Fleet Intelligenceの NAPA Emission Complianceを活用し、EUAの必要量を高い精度で見積もり、将来的な需要を先取りして把握することが可能です。
- 燃料消費量と必要な排出枠を削減できます。NAPA Voyage Optimizationを活用することで、一部の航路では最大10%の燃料削減が可能です(ただし、効果は航海の距離や条件によって異なります)。欧州域内の短距離航海では削減効果は比較的小さいものの、EUA価格の高騰が予想される状況では依然として大きな意味を持ちます。さらに、風力補助推進といった省エネ技術への投資を並行して進めることで、燃料消費とEUAの長期的な削減効果を得ることができます。詳しくは、NAPA Solution for Wind-Assisted Shipsをご参照ください。
- 船主と用船者の間で公正なコスト分担を実現します。NAPA LogbookおよびNAPA Fleet Intelligenceを活用し、船舶パフォーマンスの把握、電子記録管理、最適化を行うことで、各航海ごとの排出量を明確かつ公平な基準で算出できます。これにより、不透明さや紛争の可能性を減らし、公平なコストシェアを可能にします。
排出量や燃料使用量に関する検証可能な第三者データを提示することで、ステークホルダーからの信頼を築くことができます。このような透明性は、船主と用船者の関係を強化するだけでなく、コンプライアンスの証拠を求める金融機関、保険会社、荷主からの信頼を高め、説明責任を果たせます。

規制対応を競争力へ変える
EU ETSの義務は段階的に拡大し、2024年には排出量の40%が対象でしたが、2025年には70%、2026年以降は100%(ただし、EU域外との航海については50%)が対象となります。さらにEU ETSに加え、より厳格な規制であるFuelEU Maritime(詳しくは NAPA FuelEU Compliance Toolをご参照ください)も並行して導入されます。2025年だけで、これらのEU規制による業界全体のコスト増は約61億ドルに達すると見込まれています。さらに2028年には、国際海事機関(IMO)のGlobal Fuel Intensity措置が導入される可能性があり、重油(HFO)を使用する一般的な船舶では炭素コストが約38万ドルに達すると見込まれています。現状の運航を続けた場合、2030年までに業界全体で500億ドル規模の炭素コストを抱える可能性も指摘されています。
EU ETSがもたらす財務面・運航面・社会的信頼への影響は明らかです。排出量や燃料消費データを正確に把握することは、もはや選択肢ではなく、事業継続に不可欠な要件となっています。NAPA Fleet Intelligenceと最新の船舶パフォーマンス・脱炭素化ソリューションを活用することで、オペレーターはコンプライアンスを単なる規制対応からビジネスチャンスへと変えることができます。つまり、コスト削減、フリート運航の最適化、そしてバリューチェーン全体での協働強化へとつなげられます。
NAPA Fleet Intelligence –
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