November 27, 2025
風力推進×航路最適化で脱炭素へ ナパとノースパワー、投資判断と戦略など議論
日本・東京 — 2025年11月26日
海事プレス(ニュース ー 造船・舶用)において、在日フィンランド大使館で実施されたNAPAとNorsepower社の共同イベントに関する記事が掲載されました。ぜひご覧ください。
船舶の設計・運航支援システムを手掛けるフィンランドのナパ(NAPA)と、ローター式円筒帆「ローターセイル」を展開する同国のノースパワーは20日、都内の駐日フィンランド大使館で、風力推進システムと航路最適化が日本の海運脱炭素化にどう貢献し得るかをテーマとしたイベントを共同開催した。両社が最新の取り組みや共同研究事例などについてプレゼンテーションを行ったほか、商船三井と日本海事協会(NK)を交えた4者によるパネルディスカッションを通じて、風力推進の投資判断やROI(投資対効果)、規制・安全面、今後の市場環境について意見交換した。
冒頭、ナパジャパンの水谷直樹社長が登壇し、国際海事機関(IMO)が掲げる2050年ネットゼロ目標に向けて規制強化やカーボンプライジングが進む中、「待つという選択肢はない」と指摘。「今日焦点を当てるのは『データ』と『風』という、すでに利用可能な実務的な選択肢だ」と述べた。ノースパワーとの協業については、ローターセイルと高精度な性能モデル、気象情報を用いた航路最適化を組み合わせることで「理論値ではなく、運航上の実際の効果を示せる」と説明した。
続いてタンヤ・ヤースケライネン駐日フィンランド大使が歓迎の辞を述べ、両国の外交関係が100年以上に及ぶことに触れたほか、18世紀末に日本船“神昌丸”がロシアに漂着した際、フィンランド人学者エリック・ラクスマンが乗組員の帰国を支援した史実を紹介。「両国は海事と工学の分野で長年つながってきた」としたうえで、ナパとノースパワーの協力がさらなる連携拡大の機会となることに期待を示した。
技術紹介では、ノースパワーのユッカ・クースコスキCCOOが登壇し、商船三井、飯野海運、日本マリンの運航船向けをはじめ、RORO船、ROPAX(貨客フェリー)、タンカー、バルカーなど幅広い船種でローターセイルの導入が広がっていることを紹介。搭載は40基に達し、今後15カ月でさらに44基を予定しているという。また、横風を受ける区間など風況に恵まれた航路ではローターセイルの推力が大きく発揮されることを示し、「航路最適化と組み合わせれば、燃料・排出削減効果はさらに高まる」とした。
続いて、ナパのエグゼクティブ・バイス・プレジデント、ペッカ・パッカネン氏が登壇し、共同研究事例などを紹介。ノースパワー、住友重機械マリンエンジニアリングと共同で、北大西洋航路など複数航路を対象にシミュレーションを行った結果、ローターセイルと航路最適化システムを組み合わせることで、最適シナリオでは平均最大約28%の燃料・CO2削減効果が得られることを確認したと述べた。ローターセイル搭載船の運航データに基づく検証も継続中であることや、風力推進システムと航海最適化ソフトを組み合わせた運用が広がっていることにも言及した。
パネルディスカッションでは、ナパで風力推進技術による運航最適化分野を統括するミッコ・ヴァルティアイネン氏、ノースパワーのクースコスキCCOO、商船三井の山口誠エグゼクティブフェロー、NK技術部の舩田千城氏の4人がパネリストを務めた。議論では、市場環境の不透明さから投資判断が慎重になっているとの指摘が出る一方、国際海事機関(IMO)と各社の脱炭素目標については「方針は変えない」という認識で一致した。取り組みをランニングレースに例え、「号砲と同時に走り出した企業と、出遅れてから追う企業では将来の競争力に差がつく」との意見も出た。技術開発の進捗や他船主の動き、カーボンコストを注視しながら「状況に応じたアジャイルな意思決定が求められる」との見方が共有された。
閉会後は懇親会も開かれ、参加者が親睦を深めた。

*海事プレスから転載の許可を得ています。
海事プレス記事:https://www.kaijipress.com/news/shipbuilding/2025/11/197486/
PDF:風力推進×航路最適化で脱炭素へ ナパとノースパワー、投資判断と戦略など議論
海事プレスURL:https://www.kaijipress.com/