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多機能ツールとして知られるスイスアーミーナイフは、あらゆる課題に対応できる柔軟性から高く評価されています。Ulstein Design & Solutions AS社の復原性および重量部門責任者であるRadovan Gasparovic氏は、NAPAを「船舶設計におけるスイスアーミーナイフ」と表現しています。規制の強化、船舶構造の複雑化、そして急速なデジタル革新が進む中で、船舶設計者には、品質や精度を損なうことなく、迅速に複雑な課題を解決できる同様に柔軟なツールが求められています。  


ノルウェーに拠点を置き、X-BOW®(特徴的な逆船首形状)をはじめとするスマートで持続可能な船舶で世界的に知られるUlstein社は、こうした課題に長年取り組んできました。初期のオフショアプロジェクトから、現在の先進的な旅客船の設計に至るまで、Ulstein社は30年以上にわたりNAPAを活用しています。幾何形状の設計や流体力学、損傷時の復原性までをサポートするツール群を備えたNAPAは、変化の激しい高リスクな業界において、Ulstein社がスピード感を持って革新を実現するための力となっています。

スイスアーミーナイフのように可能性は無限大:あらゆる設計課題に対応するNAPAの柔軟性  

船舶設計者にとって、効率性、正確性、そして機動力は不可欠ですが、複数のスケジュールや専門分野が絡み合う中で、プロセスの最適化は簡単ではありません。  

しかしRadovan氏が強調するように、船舶設計の改善には大掛かりなプロセスの見直しは必要ありません。統合性や自動化を少し向上させるだけでも、目に見える効率化が生まれ、それが積み重なることで、さらに大きなコスト削減につながります。彼のチームは5名で構成されており、復原性の計算、船体のモデリング、流力性能などの専門家が揃っています。このような時間とリソースの節約は、チームにとって非常に大きな意味を持っています。 

NAPA Designerで風圧側面を可視化した区画モデル(Ulstein Design & Solutions社による設計プロジェクト)

Ulstein社は、AutoCADのエクスポート自動化から極地対応船向けのマクロ作成まで、幅広い業務に合わせてNAPAをカスタマイズしてきました。固定的なツールとは異なり、NAPAは独自のソリューションを自由に構築・検証できる柔軟性を提供し、手作業の工数を何百時間も削減しています。 

Radovan氏は、既存のNAPA機能を活用して、摩擦係数を自動計算するクロスフラッディング(横浸水)配置の定義に特化したカスタムツールセットを構築していると説明します。これにより、各プロジェクトのクロスフラッディング配置ごとの最終摩擦係数を迅速かつ容易に評価でき、損傷時の復原性計算において正確な横浸水時間の算出が可能になります。NAPAのツールをカスタマイズし、特定の要件に合わせたソリューションを構築することで、Radovan氏は、こうした時間の投資が将来的にも応用可能で、他のプロジェクトにも展開できる価値あるものになると強調しています。また、それによって業務の透明性も高まります。

  

NAPA User Meeting 2025で講演を行うRadovan Gasparovic氏

そのため、Radovan氏がNAPAを「スイスアーミーナイフ」と表現するのも納得です。NAPAは、状況に応じて柔軟に対応できるだけでなく、モジュール機能やマクロスクリプトのオプションも備えており、ユーザーが自分のニーズにぴったり合った形でソフトウェアを作り上げることができます。   

デジタルツールをカスタマイズして、船舶設計のアイデアを形にする魔法   

船舶設計や造船の分野は大きく変化しており、複雑な規制やルール、顧客の要求に応じて、今後も進化を続けていくでしょう。こうした課題に対応する方法は多岐にわたりますが、NAPAをツールボックスとして活用し、ニーズに合わせてツールを最適化するには、確かな技術力が欠かせません。   

Radovan氏は「制限があるとすれば、それは私たちのアイデアであって、NAPAではない」と語ります。適切なトレーニングに加え、少しの好奇心と実験精神があれば、船舶設計チームは大幅な時間短縮と効率向上を実現できます。このようなカスタマイズは、造船会社の生産性や設計効率の最大化が求められる激しい競争の中で、船舶設計者にとって大きな競争優位性をもたらします。 

Ulstein社が開発した船首垂線の自動検出、計算レポート、図面作成機能を備えた乾舷計算用のNAPAカスタムツール

とはいえ、カスタマイズと既存ソリューションの活用には、バランスが必要です。

「既存のツールの中には、非常に優れていて、何も不足を感じることなく使えているものも確かにあります」とRadovan氏は述べています。   

進化する復原性規則と要件への対応  

近年、復原性に関する規則や規制は大きく変化しており、今後も変わり続けることが予想されます。現在では、非損傷時復原性だけでなく、IMO(国際海事機関)による確率論的損傷時復原性にも注目が集まっており、安全で安定した船舶を設計するには、より包括的な計算と多くの計算時間が必要となります。  

これらの計算はUlstein社の日々の業務の中心であり、スピードと精度の両方が求められます。Radovan氏は「おそらく私たちにとって最も重要なツールは、NAPAの確率論的損傷時復原性アプリケーションです。毎日使用していて、本当に優れたツールです。これに関しては自社開発しておらず、NAPAのツールボックスの中でも非常に重要な存在だと考えています」と語っています。   

NAPAは、IMO(国際海事機関)や船籍国、その他の規制機関からの新たな要件に常に対応する形で更新されており、Ulstein社にとっては、コンプライアンスを確保しながら業務のスピードを落とさずに済むという安心感につながっています。さらにRadovan氏は、「NAPAは、時には規則や規制よりも一歩先を行っていることもある」と指摘しており、これはUlstein社だけでなく、業界全体の安全性にとっても非常に重要なことです。   

とはいえ、スイスアーミーナイフも時には研ぎ直しが必要です。NAPAとのオープンな協力関係や積極的な知識共有を通じて、進行性浸水(progressive flooding)や3Dモデルによる設計データの交換といったテーマは、単に検討されるだけでなく、共同開発されており、海事業界全体の革新を推進しています。  

より環境にやさしくスマートな未来へ向かって航行する

船舶設計のあらゆる側面が変化しており、やるべきことはまだまだたくさんあります。船級協会と造船会社の連携強化から、船舶への代替燃料やエネルギー効率技術の導入に至るまで、船舶設計の未来には多くの可能性が広がっています。   

NAPA User Meeting 2025でのRadovan Gasparovic氏
海事業界の専門家たちと交流しながら、NAPAソリューションの最新機能や活用法を共有

このような状況の中で、Ulstein社とNAPAの関係は単なる取引ではなく、海事業界の進化のスピードと複雑さに合わせて成長してきたパートナーシップです。革新、創造的思考、そして協働への共通のコミットメントを土台に、両チームはこれからの船舶設計における課題に、スピード・柔軟性・自信を持って取り組む体制を整えています。 

Radovan氏の言葉を借りれば、「可能性は無限大(sky is the limit)」です。 

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